「転ばぬ先の杖」は成長のチャンスを奪っているかもしれません

お母さんとお父さんの子育て塾
元氣楽塾の廣瀬 英樹です。

「転ばぬ先の杖」としての過干渉が子供に与える影響

「転ばぬ先の杖」とは、将来の失敗や危険を避けるために事前に準備しておくことのたとえですが、子育てにおいてこれが「過干渉」となる場合、子供の健全な成長を阻害する可能性があります。親の愛情からくる行動であっても、その度合いが過ぎると、子供は様々な面で悪影響を受けることになります。

ここでは、過干渉が子供に与える具体的な影響について、多角的に解説します。

1. 自主性・主体性の欠如

過干渉な親は、子供が失敗することを恐れるあまり、先回りしてすべてのことを決めてしまったり、子供の行動に細かく口出しをしたりします。

  • 自分で考える力の喪失: 親が常に指示を出すことで、子供は自分で物事を考え、判断する機会を失います。結果として、指示待ち人間になり、いかに良い大学に行き、良い会社に入っても、自分のキャリアすらも決められない人が増えていく傾向があります。
  • 主体的な行動の抑制: 「~しなさい」「~してはいけない」という指示が多いと、子供は自分の興味や関心に基づいて行動する意欲を失います。新しいことに挑戦することへの躊躇や、失敗を過度に恐れるようになることがあります。
  • 責任感の欠如: 自分の行動の結果について、親が常に介入することで、子供は自分の行動に責任を持つという感覚が育ちにくくなります。失敗しても「親のせい」と他責にしたり、誰かが解決してくれると考えるようになることがあります。

「子供のために」という思いが強すぎると逆に子供は考える機会を失います。親が子供自身の「自分で感じ考える機会を奪ってしまっているかも知れない」と氣付く事が何よりも大事です

親の言葉に「~しなさい」「~してはいけない」という命令形、否定形の言葉が所々に含まれている場合は、要注意です。もしもあなたが親ならば、すぐに自分の子供への関わり方を考え直しましょう。

もしもあなたが子供なら、親の言う事を無条件で聞き入れるのではなく、「本当はこうしたい!」と自分の意見や意思を親にぶつけてみて下さい。あなたの親が聞き入れてくれない親なら、その思いを実現できる年齢まで大事にその思いを胸にしまっておいて下さい。そして、一刻も早く親離れする事をおすすめします。自分が自由になった時、自分の意思で自分の思いを現実化させましょう。

2. 自己肯定感の低下

過干渉は、子供の自己肯定感を著しく低下させる要因となります。

  • 「自分はできない」という思い込み: 親が常に手出し口出しをすることで、子供は「自分は何もできない」「自分は役に立たない」という感覚を抱きやすくなります。
  • 達成感の欠如: 自分で困難を乗り越え、成功体験を積む機会が奪われるため、そこから得られる達成感や自信が育ちません。
  • 親の評価への依存: 自分の価値を親の評価基準に委ねるようになり、親の期待に応えられないと「自分はダメだ」と感じるようになります。これは、将来的に他者の評価に過度に左右される人間になる可能性があります。

子どものうちに自己肯定感が育てられないと、大人になってから社会生活を送る時にとても苦労します。
親がいつまでも子供に代わって動くことはできません。子供には子供の人生があり、考えがあり、感性があり、価値観があります。いくら我が子でも親と同じ価値観であるとは限りません。と言うより、同じである方が珍しいと思って下さい。「親の当たり前が子供の当たり前にはならない」と言うことを覚えておくと、「子供を見守る」行動や言動ができる様になります。

3. 問題解決能力の未発達

人生には常に大小様々な問題が付きまといます。子供の頃に問題解決の経験を積むことは、将来を生き抜く上で非常に重要です。

  • 試行錯誤の機会を奪う: 親が問題を先回りして解決してしまうことで、子供は自分で問題に直面し、様々な解決策を試行錯誤する機会を失います。
  • 困難への耐性の欠如: ちょっとした困難に直面しただけで、すぐに諦めてしまったり、他者に依存したりする傾向が強まります。
  • 「立ち直る力」の低下: 失敗から学び、次へと活かす力が育ちにくくなります。挫折に弱く、回復に時間を要するようになることがあります。

親が常に問題解決をしてしまうと、大人になった時に自分で何もできなくなってしまいます。何もできない自分を棚に置いて他人を責めたり、親のせいにしたり、自責の考えができないまま社会に放り出されてしまいます。

また、些細な問題も親が介入することで問題が肥大してしまい、周りを巻き込み大問題になってしまうこともあります。

子供の頃から、自力で問題解決できる様になると、試行錯誤能力、困難に立ち向かう力、決断力、判断力が磨かれます。そして、自分ではどうにもならないと判断した時に、誰かに相談しようと考えます。「自分の意見」と「相談相手の意見」を比べ、または良いところを集めて、問題解決に向かう事ができます。

子供の問題に親から頭を突っ込むのではなく、子供の方から相談をされた時のみ相談に乗る。また、解決方法をそのまま伝えるのではなく、問題解決のヒントを与え、そのヒントをもとに子供が自分で解決策にたどり着けるようにしてあげる事ができれば、子供は著しく成長していきます。

4. 社会性の発達への影響

過干渉は、子供の社会性の発達にも悪影響を及ぼします。

  • コミュニケーション能力の不足: 親が間に入って人間関係をコントロールしてしまうと、子供は自分で友人との関係を築き、トラブルを解決する経験ができません。
  • 他者への共感性の欠如: 自分の意見を主張する機会が少ないため、他者の意見を受け入れたり、共感したりする力が育ちにくいことがあります。
  • 集団行動への適応の困難: 集団の中で自分の役割を見つけ、協力して行動することに苦手意識を持つようになることがあります。

他人とのコミュニケーションが上手くいかなくなると、孤立し自分の殻の中に閉じこもってしまいます。そうなると状態はどんどん悪化し、最終的には引きこもってしまう原因にもなってしまいます。

「良かれと思ってやった事」が結果的に「誰のためにもならない事」になってしまいます。

ここでは、「良かれと思ってやった事」が「親の自己満足」になっています。
結果、子供を苦しめるだけではなく親自身も苦しめることになります。

家庭での会話が一方的になっていないか、一方通行になっていないか今一度自分の行動を観察してみて下さい。

5. 精神的な不安定さ

長期的な過干渉は、子供の精神状態にも影響を及ぼすことがあります。

  • ストレスや不安の増大: 親の期待に応えなければならないというプレッシャーや、常に監視されているような感覚から、子供は慢性的なストレスや不安を抱えることがあります。
  • 反抗・依存の二極化: 成長するにつれて、親への過度な反発を示すか、逆に親に完全に依存して自立できないかのどちらかの傾向が強く出る場合があります。
  • うつ病や不安障害のリスク: 極端なケースでは、親からの過度な干渉が精神的な病気の引き金となることもあります。

親の期待に応えなければと言う思いや、親から良い子と思われたいと言う思いが、長くなれば長くなるほど、子供の感性をねじ曲げてしまいます。
そして、そのねじれは時間をかけて酷くなり、固まっていきます。一度固まってしまったねじれを元に戻すには苦痛や不安を伴い、とても過酷な時間を過ごすことになります。

それは、子供が親を恨む原因となり、その憎しみの浄化には途方もない時間が必要となります。

苦しみと憎しみが同居しますので、子供の心には余裕がなくなり通常の社会生活が送れなくなる人も出てきます。
我が子をそうさせないために努力ができるのが本当の親と言えるのではないでしょうか。

6. 親子関係の悪化

愛情からくる過干渉であっても、子供が成長するにつれてその関係は悪化する可能性があります。

  • 信頼関係の希薄化: 子供は親が自分を信じてくれていないと感じ、親に対して本音を話さなくなることがあります。
  • 息苦しさや不満の蓄積: 親の過度な介入が、子供にとって息苦しさとなり、親に対する不満や反発心につながることがあります。
  • 自立後の関係性の問題: 自立後も親が子離れできず、子供の人生に介入し続けることで、親子関係が断絶してしまうケースも見られます。

「子供のために」と思うのであれば、「まずは子供にさせる」「子供に任せる」。その後に「次同じ事があったらこうしようね」「次はこうしてみたらどうなると思う?」と問いかけ、次の子供の決断や行動を促せると、子供は親を「良き相談相手である」と思う様になり、親子の絆はより深くなり、よりよい親子関係が築くことにつながります。

まとめ:適切な「転ばぬ先の杖」とは

「転ばぬ先の杖」は、決して悪いことではありません。しかし、子育てにおいてその意味を履き違え、過干渉になってしまうと、子供の成長にとってマイナスとなります。

適切な「転ばぬ先の杖」とは、子供の自主性を尊重しつつ、見守り、本当に困ったときに手を差し伸べることです。

  • 見守る勇気: 子供が自分で挑戦し、失敗する経験を許容すること。
  • アドバイスは求められた時のみに: 子供が困っている時、助けを求めてきた時に、一方的に解決するのではなく、一緒に考える姿勢を持つこと。
  • 環境を整えること: 子供が安全に挑戦できる環境を整え、必要に応じて情報提供をすること。
  • 無条件の愛情と信頼: 子供がどんな結果を出しても、その存在自体を肯定し、信じること。

子供は、失敗を通して学び、成長していきます。親は、その成長を信じて、一歩引いて見守る「愛情ある見守り」の姿勢を持つことが、何よりも重要です。子供が自分自身の力で未来を切り拓く力を育むためにも、過干渉にならないよう、親自身が意識的にブレーキをかける必要があるのです。

自分の行動や発言に自信がない、自分の行動や言動を自分ではどうする事もできないと感じているのであれば、一度私に相談してみて下さい。あなたの「変わりたい!」と言う氣持ちに応えてみせますので。

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